ズキズキと痛む腹をかばいながら 窓越しに月を見ていたよ
 勝手口のきたねぇ窓ガラスから望む満月は
 うっすらとぼやけて ロウソクの灯火みたいだ

 父さん
 母さんは俺の腹を蹴るんだ
 父さんに顔が似てきたと言って、毎日蹴る
 大丈夫だよ 父さんとの約束通り、こちらから手は出していない
 「父さんが出て行っている間、母さんを守ってくれ」
 それが、約束だから

 野球はやめたよ 母さんは、父さんが好きなものを嫌がるんだ
 サッカーも楽しいけれど キャッチボールができないのが 少しさみしい
 友達とは仲良くやってるよ 明るく接してる
 「友達を守れるような強い男になれ」
 それも、約束だから

 なぁ父さん なんで帰ってこないんだ
 かえってきてよ かえってきてくれ
 げんかいだよ どうかおれにきづかせないでくれ
 なぁなぁ きづかせないでくれよきづかせないで

 おれをまもってくれるにんげんが このよにいるのかということを

 おねがいだかえってきてよとうさんおねがいだ
 おねがいだおねがいだおねがいだよ
   




   

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                        …ネガイダ










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     ∧∧    
     (;^Д)   
    0Y⌒Gヽ  
    (_(__ つ         {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄}l}
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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                  ┌─────────
                  │  …誰かいる?
                  └─────────






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                    【忘れるべき者】











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                             カチ…
                  / ̄XII ̄\
                    // ̄.||. ̄\\
                    //      ./ .\\       カチ…
               | |_    /  _| |
               | | ̄    |    ̄| |
                  \\       .//
                     \\_.||._//
                  \_VI_/

                            +6時5分+



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                         ┌──────
                         │ ………
                         └──/───
             ∧ ∧
            [(^Д^;)]
          | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
          | | ̄ ̄ ̄ ̄| .|
          | |  @  @| .|
          | |@  @  | .|
          | |____| .|
          |.________|

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      ┌─────
      │ ………
      └──\──

             ∧ ∧                 | /
            [(;^д)]         _ _ _ _ −
          | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|     l         l
          | | ̄ ̄ ̄ ̄| .|     l         l
          | |  @  @| .|     l         l
          | |@  @  | .|     l         l
          | |____| .|     l         l
          |.________|      l._ _ _ _l




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               \从从从从从从从从从从从从/
               <  今日も起きちゃったよ  >
               <  もおおおおお!!    >
               /∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨∨\

           バンバン  O
                       lil<<; )⌒ヽ
                从 O  `Gー(___i]つ
              (⌒ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄⌒)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

             ボクの名前は枯木タカラ
             枯れ木と書いて「こぎ」と読む


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           ┌─────────
           │ 3番さんのせいだ!
           │ 3番さんのせい!
           └───O─────
                  0
                   。
                      ∧∧ .( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄)
                   (,; д)(_____)
                (( .〈7] i]つ
                   / 、 l
                〈_/ヽ_)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

          両親はいない。
          しっかりものの父とのんびりものの母
          二人共ボクが中学生の時、火事によって死に別れた

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         イッチニー

                     /)ヽ∧
                   ((./ /;^д) 
                    ヽ <y>ヽ   サンシー
                   /    (/
                  .(_/`ヽ_)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
             兄弟もいない
             恐らく一人っ子だ

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                  ││
                  ││
                  ││     ┌──────────
                  ││     │ 87番、起床しました
                  ││     └──/───────
       __       ││
       丶看守./    ││ ∧ ∧
      ( `Д´)ノ    ││ (Д^,, )
.     /( ^v^)       ││  UU[ ヽ
      ││        ││  (_(_i]_)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


        「おそらく」、というのは変な言い回しかもしれないが、
        本当によくわからない。

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         ∧∧ モグモグ
       (,,^ - ) ))
       /  <つ= 、∀ 、i><゚> ,
      とと_)  {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄}l}
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

    あの火事以来、ボクは極端に物覚えが悪くなってしまい
    特にあの日以前の事は、うまく思い出せない


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        懺悔室の心理アドバイザー、ネーさんは



                                     /
            /              ┌─────────────
                      │ それは心の防御反応だよ
                  λ_λ    │ 思い出さないほうがいいのさ
     / /     ミ `ー´ 彡   └──/──────────
   / /       /  iyi )             /  /
              ヽ⊃   ヽ       /  /
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                           …という
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                           | |
                           | |
                           | |              ,─^─、
    チョコレートナイデスカ?        | |   マタコンドネ   .i幵幵幵i
                  ∧∧     | |     λ_λ  i幵幵幵i
                 (,,^Д)       | |    (ー´ 彡 ヽ,ニニニ,/
                /7] U       | |    0  iyi )')  ̄ ̄ ̄ ̄|
              ( _ ヽ| ̄ ̄ ̄.| | ̄ ̄ ̄|ヽ_,ハ  ヽ       |
               |_|L,i__i|      .| |      |  i lし`ー'.     |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


         どうやらボクの深層心理は、こんなに落ちぶれたボクを
         未だに守ろうとしているらしい。


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            |\   /\        ┌───────
            |  ヽ/.  \         .│  ・ ・ ・ ・ ・
            l   ヽ.---‐‐‐- .     └──/────
            |     i`ヽ   `ヽ
            |          イ  i
            l         i__i  i
                i  〃        /
             \        /
              ゝ‐‐‐‐‐‐‐丶ゝ
             /     \く/\
               /.       \!  \

      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    …ボクたち家族を襲った炎。それは放火によるものだった

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                         ∧∧               
                            ( _ )
                        (i  i)
                          |ー‐|
                         し`J
      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                  ―――犯人は

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                                <`ヽ、
                                   ヽ.: メ{
                               ,. イ  } .: .:て
                                  (: . { / .:7⌒ヽ   `       \ 、 从
                                \.V .: .{        ”      ヽ V⌒`
    ┏┓    ┏┳┓  ┏┓                ` :..、ヽ  `    ,    ヽ、   } |
┏━┛┗━┓┃┃┃┏┛┗┓            从     ).ノ ”  \、       )`ー' ,ノ
┗━┓┏━┛┗┻┛┃┏┓┃            ⌒ヽ、  ( '  . .:    }ヽ  ,   ( . .:.:r'
┏┓┃┃┏┓      ┗┛┃┃┏┳┳┓      }て \  。 : ノ .: ソゝ; .  ヽ,.ソ
┃┃┃┃┃┃        ┏┛┃┗┻┫┃      r人 {   ` 、 "  .:   ,; .: ., /
┗┛┗┛┗┛        ┗━┛    ┗┛       }. :. ノ  ,  ,;:. ) .: , "       /
               (:. ,:.           从,,ノ.:/   ,;.:  '   .ノし': .: ," (
              .:从,)ノ':.:,         ⌒ヽ .;/  .: ,,; 从    .:..,   从   ヽ
             ,;;'人,,ノ;ノヾ;,.,          }/  `,;.: ",, ;.:て , ,, ,,, .:. `,;"   〉  '
           ,;,、 ,;ノノ .:;.(. ,.( ,.   ∧∧   ノ{  ゙  、 ,”,; ,   .: ,; "   /  ,, ;
          ,、 ,.:;(゙:  ,.:.人:. ヾ,、.   (;:_ )  ⌒ヽ   ノ{  .: ."   ∴.:  ,;    .:"
         ,ノ (,.ノ,、ヾ , .,;ノ (;. (:,  ,(i;::: i)      \”. :. ,し'/;  ,;;:    ; :..
         ( ,;. ,:ノヾ; . ,;) ,、 ヽ;,:.;)..从从‐|     ` . ,. .:  (   .:  #. .:ノ{从:.: . "
         ,):.      , 从ヾ;. '',人ヾ,ヾ:J  ___,,,.:;    ,, ,; ,;  .:.:  ,; .; ;,.; て__
      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


                    ボクの同級生。

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┗━┛┗┛  ┗━┛┗┛                    ,ィ
'´ /  7'′                          , イ     , ゞ                  ,
t (.  ,ィ                      ,イ' (    /(  ,ィ    ,ィ , i'            /|
`−r'´j                         {   , ,} てyZ.   } ´{ィ/゙i        ,.ィ {
/´ィ て_              /            イ'    ,イ  ,'     z
゙ ′            , イてィ′         レ
. ,イ           '´                           ┏┓        ┏┓
'7                                 ┏━━┛┗┓┏━━┛┗┓
 >              >z,         ,イ /!        .┗━┓  ┏┛┗━┓  ┏┛
/            イ  7 ,ィ      ´  レ'         ┏┛┃┃    ┏┛┃┃
{                , ュ.  √     z.   ,ィ         ┏┛┏┫┃  ┏┛┏┫┃
7          '´ . /,イ         { ,,. ,イ/ェノ     ┗━┛┗┛  ┗━┛┗┛
i'              ′ナ/レ      イ' ,イ ,'  z
...    彡  z_, ィ'´. /'.           ハ  i  /   ',i',                  ,ィ
 , イ     /, Z   ,イ ,ィ       i  弋、i..    ヽ            ,イ   r'(  ,.ィ
/  ,     ′ゝ'   } ゙`´,.      ィ'r゙     `      弋ュ、        ,ィ/   ヾ、`¨´
.  i     ,ィ   ,イ/i /.      /'. i     ,  ト、       ̄~゛'ー−ェ彡'´ , ィァ'  廴.    ,ィ
ィ  ヾ!. , イ/  ,ィ√ i!.    ,,,, ェ'´. ド!.   iハ i `ヽ、 _     r'´`´_,..-‐'.ア  ,ィ',.ィ''ゞ'^´
' イ      廴/i',イ  ,'!_,廴ノ  乙ィ ,!    ` ゞ|k=゙¬'´z_>   ` ー'´   ゞ彡ゞ´
',       (  `レ'  } ,ィ.        マ      マ`ヽ、    `ゞ==Z.       イェェェァ


               ボクは本人からはっきり聞いた
               ボクら家族を選んだのに、特に理由はないのだと

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             (
             )   ノノ
             ((   ,,,;)
              )  ノ             (
             ( _ ⌒)     ) ::)     )  )
              (  (      (:: .(      ( ::(
              ) ノ       )::)      ) ::)
              )ノ        l/       //
        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  
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             (
             )   ノノ
             ((   ,,,;)         ザッ
              )  ノ     ∧∧      (
             ( _ ⌒)     (ソ皿 ,)       )  )
              (  (     / ^:^ ヽ      ( ::(
              ) ノ    G   i)       ) ::)
              )ノ      i___iノ       //
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               \ ヽ    / / / |  ./  ヽ |     ,′
        i        \ ヽ /./ / /::::::::::_,,,,,,,,ヽ,   /     ,,,,,,,
       ,′  ,      / / / / /''' ̄ ̄     '  (    ,-‐‐
      ノ   (         i'' ./ / /__,,,,,,---‐‐‐'''|  \  )
     (    丿        |''' ./ /三三三三三三:::::: i    ゝ `ヽ
      ヽ  :,'        ',/ /:::三三三三三三:::::: /   (  ,'
      丿 ,'    ザ    \/:::::::::::::ヽ======vヽ::::::/\    `ヽ `ヽ
     (  (      リ     .' ー---二二二二'../__|\    i ノ
      )  `ヽ       ッ   / \ :::::::::::/\::::::/ ̄     \  ζノ
     ,' :,‐‐‐''           /   :\::::::/:::::::::∨::::::::::::         \ ',
     ソ             ./   ::::::::::丶::::::::::::::::・:::::::::::::::::::::       ノ
    (               |   ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::・:::::::::::::::::::::::! 
     ヽ

                 ボクは憎んだ。

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              彡
         彡   彡
         彡   (  ヽ  彡
         (,' ヽ i ⌒ i  ( \         ┃    ┃┃
      彡   i   i |   |  | ⌒ |        ━╋━┓┃┃
      i⌒ヽ |   ヽ   ヽ-i   .|ヽ        ┃  ┃   
      丶 'ヽi              i       ┃  ┃   
       i   '   )  )    ) ,'.      ┃  ┃   
       ヽ              ,'
        ヽ            i
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           \/ ̄ ̄ ̄ ̄   `ヽ     ┃  ┃
           ,'            i         ┃
           i             ヽ.       ┃
                                 ┛



                周りが見えなくなるほど


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          ┼┐ll         ガ      ┃    ┃┃┃  ┃
          / ./ ││       リ    ━╋━┓┃┃┃  ┃
                   /               ┃  ┃    ┃  ┃
     ガ            ガ             ┃  ┃        ┃
      リ                リ          ┃  ┃        ┛
                                 ガリ
   ┃    ┃┃┃  ┃      ガ       ガリ
 ━╋━┓┃┃┃  ┃        り
   ┃  ┃    ┃  ┃               ┼┐ll  
   ┃  ┃        ┃  ガリ               / ./ ││
   ┃  ┃        ┛                       / 
                     ┃    ┃┃┃  ┃         ガリ
       ガリ         ━╋━┓┃┃┃  ┃
                     ┃  ┃    ┃  ┃   ガ
     ガリ      ガ          ┃  ┃        ┃    リ
            リ         ┃  ┃        ┛        ガリ


        
            憎んで憎んで憎み続けて

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                          ∧∧
                      (^Д^,)
                         |<y> ヽ
                      とししと .)



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                            :.:. :.: .:. :.: .:.: .:. :.: .:. :.: .:.:.: .:. :.: .:.:. :.: ..
                              :.:. :.: .:. :.: .:.: .:. :.: .:. :.: .:.:.: .:. :.: .:.:. :.:
      _____                      :.:. :.: .:. :.: .:.: .:. :.: .:. :.: .:.:.: .:
      |  ___. |                        :.:. :.: .:. :.: .:.: .:. :.: .:. :.: .:
      | |卅卅卅| |
      |   ̄ ̄ ̄ .|
      |         :|         ∧∧
      |         :|          (^Д^,)
      |         :|         |<y> ヽ
      |         :|        とししと .)   {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                …気づけば、忘身刑。

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                              :.:. :.: .:. :.: .:.: .:. :.: .:. :.: .:.:.: .:. :.: .:.:. :.:
      _____                      :.:. :.: .:. :.: .:.: .:. :.: .:. :.: .:.:.: .:
      |  ___. |                        :.:. :.: .:. :.: .:.: .:. :.: .:. :.: .:
      | |卅卅卅| | < カツ… カツ…
      |   ̄ ̄ ̄ .|            l /
      |         :|         ∧∧ −
      |         :|          (Д^ ,,)
      |         :|         |<y> ヽ
      |         :|        とししと .)   {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

        これは、憎しみにかまけて自分のために生きなかったことへのツケだ。
        これは、いつまでも苦しみを乗り越えられない自分への救いだ。

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                            :.:. :.: .:. :.: .:.: .:. :.: .:. :.: .:.:.: .:. :.: .:.:. :.: ..
                              :.:. :.: .:. :.: .:.: .:. :.: .:. :.: .:.:.: .:. :.: .:.:. :.:
      _____                      :.:. :.: .:. :.: .:.: .:. :.: .:. :.: .:.:.: .:
      |  ___. |                        :.:. :.: .:. :.: .:.: .:. :.: .:. :.: .:
      | |卅卅卅| |
      |   ̄ ̄ ̄ .|
      |         :|   .∧∧   
      |         :|   (д^,,)  
      |         :|  とヽ  [ヽ  ) )
      |         :|    し(,_i]つ       {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

            今ボクはそんなことを自分に言い聞かせながら、
            忘身の日を待っている


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                                |
                           /       |
                  __   - コンコン>|
                  ヽ看守/            |
                      ( `Д´)         |
                      <( ^y^)         |
                       |  \         |
             ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


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                         _______
                        | || .|| .||ヽ.|| .|| |
                        | || Φ(,||コ^||)Φ |
                         ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                  ┌─────────
                  │ 87番か どうした。
            __  └──/──────
           ヽ   /
           (    )
           (ヽ ノ)

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    ┌─────
    │  ……
    └─────
               ┌─────
               │ えーと
               └───\─
                         _______
                        | || .|| .||ヽ.|| .|| |
                        | || Φ(,||コ^||)Φ |
                         ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
            __
           ヽ   /
           (    )
           (ヽ ノ)


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  ┌─────
  │ 安藤さん
  └─────\从从从从/
           <違う!!>
           /∨∨∨∨イッショニスンナ
                           ┌────────────
                           │ すみません、宇和島さん
                           └────────────
                          ┌───────────────
                          │ あ、消去法できやがったな てめー
                          └───────────────
  ┌────────
  │ じゃあ小根岸さん
  └──────┌────────────────
                │ そうかい小根岸より印象薄いか俺は
                └────────────アンナ無口ヨリ



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                    ││
           ┌───────
           │ 毛利だよ…。
           └──/────
┌────────────
│覚えてくれなくいいけどさ…
└\───────────
                 ││        ┌───────
                 ││        │ すみません…
                 ││        └──/────
    フー  __        ││
      .ヽ看守/      ││  ∧ ∧
      <( Д li)       ││ (Д^; )
       (^v^ )>       ││  UU[ ヽ
        <  /        .││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


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┌───────       ││
│ で、どうした       ││
└─\─────       ││
                 ││        ┌─────
                 ││        │ あの…
                 ││        └──/──
.      __          ││
.     ヽ  看/       ││  ∧ ∧
      (   `)        ││ (Д^,, )
     ./(   )ヽ      ││  UU[ ヽ
       ││         .││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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                 /ヽ,       /ヽ,
 ┌─────      /  ',        /  ',
 │ ここって.       /     ',     /   .',
 └──\──    /     ',    /     ',
              /        '___/      .',
               /                ',
           i/              \i
           /   :::/ヽ:::::::::::::::::::::::/ヽ:::   ',
          ,'   :::/:::::::ヽ::::::::::::::::/:::::::i:::::   i.  ┌──────────
          i   ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::   |  │ “出る”んですか?
              ',   :::::::::::::┌――ヘ:::::::::::::   ,'.. └─────/────
        / ̄ヽ  ::::::::::::::|_i⌒i⌒i_i:::::::ヽヽ /‐‐‐-,
       / ̄ ̄ヽ\ ::::::::::::::',___/::::::::  // ̄ ̄`ヽ
      /     ト ヽ |/ヽ‐‐‐‐::::::::::: ‐/  / イ     i
        i | | | | `´ |_ \::::::::::::::/ _/‐´ | | | |ハ
      ヽ ソ.丿ノ   / /  .\ /  \l   ゝノノ ソ  |
       |       /  ―――/____|           /
.        \___/             \____/
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                 ││     ┌─────────          
                 ││     │ 最近、ふとした時に
                 ││     │ 声がするんですよ┌──────
                 ││     └──/─────  | おいやめろ
  ┌───             ││                  .└──────
  │ え゙            ││       ┌───────────────
  └\──             ││       │ ちゃんとは聞き取れないんですが、
.      __          ││       │ なんだか男の声で
.     ヽ看守/       ││  ∧ ∧   .│ 恨み節のような\从从从从从/
      (lii Д)         ││ (Д^,, )  └─/─────<やめろ!!>
     ./(   冫        ││  UU[ ヽ             /∨∨∨∨∨\
       / \         ││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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┌──────────
│ そりゃお前らはいいよ ー‐─―――――――――――――――――──┐
│ 忘れて出てくんだから ..:i⌒i───i⌒i───i⌒i───i⌒i───i⌒i──┤
└\─────────.::| :::|   ,,,,.| :::|    .| :::|   ./.| :::|     | :::|     |
      │    | :::|     | :::|--i'''' ::::| :::|ヽ‐‐,, . | :::| /  | :::|     | :::|     |
      │    | :::|-‐‐‐'''' | :::|  ヽ____| :::|__,i   ̄| :::|二二==| :::| \ 从从从从从从从从从/
      │    | :::| ̄ ̄ ̄| :::| ̄ ̄ ̄| :::|  ̄ ̄ | :::|     | :::| < でもこっちはずっと  >
      │    | :::|  u::::::| :::|::::::::::::::::| :::|:::::::: :: : | :::|\.   .| :::| < ここで働くんだよ!!>
      │   /.| :::| .:::<◎| :::| :;;;;;;;;;;;;:| :::|<◎>| :::|.  ',.   | :::| / ∨∨∨∨∨∨∨∨∨\
      │. i (二i )  ::::::::| :::| :;;;;;;;;;;;;:| :::|:::::::: :  | :::|  .i ( i二)    .| :::|     |
      │.. i. (三  ∪:::::::| :::|: :::::::::::::| :::|:::::u:::  | :::|  ,'   三 ) .     | :::|     |
      │_〃|,,;;;|___|,;;;;|___|,;;;|___|,;;;;|/__|,;;;;| ヾ__|,;;;;|__.|    

                              /\      /\
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     ┌────────           /:::      \       ヽ
     │ ごめんなさい…             /:::::               i
     └────\───        /i                  i
                        /:::::         ∪        i
                       i::::::      ∪                ,'
                       ',:::::                  , '
                        \            ∪   /

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      ┌────
      │ ん?                ┌──────
      └────              │ あ、そうか
                              └──────
                               ┌──────
                  __         │  96番だ
                 ヽ看守/         .└──/───
                  (`Д´;)
                  V v^ )ヽ
                  

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                 ││
┌────────── ││
│ 隣の居房だよ。       .││
│ 一昨日新しい         ││
│ 受刑者が入ったんだ  ││        ┌─────
└─\──────── ││        │  隣…
                 ││        └──/──
.      __          ││
.     ヽ  看/       ││  ∧ ∧
      ( `д)        ││ (,^Д^,)
     < ^v)        ││  UU[ ヽ
       ││         .││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

┌──────────────
│忘身刑がよほどショックだったか
│元々そういう奴なのか
│ずっとブツクサいってる暗い男だ
└──────────────



                 |回| _______         ________
                 |旦|;;;|         |        | || || || || || || ||
                    |         |        |_||_,,||_,,||_,,||_,,||_,,||_,,||_,
                    |    。    |
                    |ll=       | |ii|
                    |   lニニl    |
                    |         |
                    |         |
_________________.|         |_____________
              ;;;:::..........   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                                ┌──────────────
                                │ まあ、ここではそんな奴は
                                │ 珍しくはない
                                └──────────────


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
 ┌────────── 
 │ 気が病んでるんだよ /ヽ       /ヽ
 │ 解錠時間に会ったら    ヽ.   /  ヽ
 │ よくしてやってくれ。       ヽ. /     ヽ
 └──────────     /       '.,      ┌───────
                    |,     ̄'        ヽ   .│ 歳もちょうど
                , '  /`ヽ     /`ヽ.  ヽ   │ お前くらいだ
                  /   i   ヽ    /   i    i..  └───────
                i                 |
              \      i二二ヽ   ヽヽ ,'
    ┌─────  ヽ,,      |____i    /
    │ …ふーん      '''‐‐‐‐---    --'''\ヽ
    └──\──     / \    /  __ゝ ヽ
                   / ̄/ \   /   \    ヽ
                 i   ̄ ̄ ソ  / ̄      丶

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  ┌─────         ││
  │ 毛利さん.        ││
  └─────         ││
┌─────────   ││    ┌──────────
│ 俺. 仕事あるんだけど. . ││    │そもそも忘身刑って
└\────────   ││    │ どんな人が受けるん
                 ││    │  ですか?
                 ││    └──/───────
                 ││             ┌──────────
     ____.        ││             │ お前結構.ぐいぐい
.     ヽ看守/       ││  ∧ ∧         .│ 来るな…
.     (`Д´ )        ││ (Д^,, )        └──────────
      (^v^ )>        ││  UU[ ヽ
       ││         .││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





   ┌───────
   │ 忘身刑になる
   │ 犯罪ねえ                  ┌─────────
   └───\───               │ 一口で言うには
                            │ 難しいんだよ
                  __      └──/──────
                  ヽ看守/        
                  (`Д´;)
                 └(^v^ )ヽ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌──────────
│まず大元となる規準は
└──────────


                        / ̄ ̄ ̄ ̄\
                        i −−−−− i
                        |二二二二二二 |
                    .|ミ::::::::::::::::::i彡|
                   //        ヽ\
                 i l    ├─┤   | i
                 | l   .|   .|    | |
      ̄  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄  ̄
                                ┌─────────
                                │記憶を消すに
                                │あたいするかどうかだ
                                └──────────


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


         例えば
         隣人を一人殺して、全く反省してない奴がいたら

                          lヽ,
                          |_:!.;
                          .||∧_∧
                          ∩ @∀@)
                          ヽ    )
           ∧λ             | | |
          (。;;。;#)つ:;;:メつ         (__)_)
         :::::::::::::::::::::::::::::::::.....


                お前はどう裁く?

 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



                 ││
                 ││
                 ││      ┌───────
                 ││      │ …死刑ですね
┌─────           ││      └──/────
│ そうか              ││
└─\───           ││
.      __          ││
.     ヽ  看/       ││  ∧ ∧
      (   `)        ││ (Д^,, )
      (く^v)         ││  ∞ [ ヽ
       ││         .││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


        なら、隣人を一人刺殺してしまい
        深く反省している人間は?





.                    ゚。  ∧_∧。 ゚
               ||_      〈^)(^ヽ )
           ∧λ |,_l       ヽ    ヽ
          (。;;。;#)つ:;;:メつ    (,_(,_,、_)
          :::::::::::::::::::::::::::::::::.....


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



                 ││
                 ││
                 ││
                 ││   ┌──────────
                 ││   │ …場合によりますね
.      __          ││   └───/──────
.     ヽ  看/       ││  ∧ ∧
      (   `)        ││ (Д^,, )
      (く^v)         ││  ∩と[ ヽ
       ││         .││  (_(_i]_)     {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ┌─/────────
 │ 記憶を消す必要は? .┌───────
 └──────────│無いと思います
                 └───────


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


        次、大量殺戮をして
        深く反省してるなどと言い出した奴は?




.                    ゚。  ∧_∧。 ゚
                  ||_   〈^)(^ヽ )
        ∧∧       |,_l    ヽ    ヽ            ∧λ
    と'#:::0(;;゙o;;。)つ (、0;'。#)っ;;⊃  (,_(,_,、_)       と´#;;メつ#!i;-゙)っ
   :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: :.:::.::::::::::::::::..               ::::::::::::::::::::::::::::::::........ . ..



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


         ┌───────
         │ …死刑でしょう
         └───\───         .┌──────────
                 ││          │ 反省しているなら
                 ││          │ 死をもって
                 ││          │ 償えるはずです。
                 ││          └──/───────
.      __          ││
.     ヽ  看/       ││ .∧ ∧
      (   `)        ││ (Д ,,)
     < ^v)        ││  UU[ ヽ
       ││         .││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
.                    ││
. ┌─────       ││
. │ じゃあ         ││
. └\────       ││
                 ││
.      __          ││
.     ヽ  看/       ││  ∧ ∧
      (   `)        ││ (д^,, )
     < ^v)        ││  UU[ ヽ
       ││         .││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



         ┌──────────────
         │ 隣人の飼い猫を一匹刺殺して
         │ 全く反省してない奴は?
         └──────────────

                          lヽ,
                          |_:!.;
                          .||∧_∧
                          ∩ @∀@)
                          ヽ    )
           ∧,,,                 | | |
      <@;;, (メ_;。)@;;;)〜             (__)_)
        ::::::::::::::::::::::::::::::.....



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                 ││
                 ││    ┌─────
                 ││    │ ………
.      __          ││    └─/───
.     ヽ    /       ││  ∧ ∧
.     (    )         ││ (д^ ;)
      (ヽ ノ)       ││  UU[ ヽ
       ││         .││  (_(_i]_)       {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┌──/────
│死刑には弱い
└───────┌──────────────────
                │でも懲役を終えた後、
                │そいつが今度は人を
                │殺しうると ―――― そうは思わないか?
                └──────────────────

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





         ┌──────┐
         │  だから消す │
         └─────┐└────────────
                     │そいつの人格を作りあげた
                     │その経歴を
                     └────────────





━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

      


      
       ┌─────
       │ ………                      ┌────
       └─────                   │ボクも
                                └────
                         ┌────────
                         │そういう人間って
                         │ことですね
                    ∧∧ └──/─────
                   (,^Д^,)
                   / <y>ヽ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


┌─────┐         ││
│ ………   |         ││
└────┐└──────
          │そうかもな  
          └──/────
                 ││
.      __          ││
     .ヽ  看/       ││  ∧ ∧
.     (  д)         ││ (д^ ,,)
      (  ∞         ││  UU[ ヽ
       ││         .││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
                   ││
┌─────────────
│ お前ほど
│ 「いい子ちゃん」が来るのは.          ┌────────
│ 珍しいけどな                  │ ボクいい子ちゃん
└─\───────────         │ じゃないです
                 ││          └──/─────
                 ││
.      __          ││
     .ヽ  看/       ││  ∧ ∧
     (  `Д)ノ       ││ (Д^ ,,)
      ( l^v)         ││  UU[ ヽ
       ││         .││  (_(_i]_)     {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  ┌/────────
  │  褒めてんだから
  │  喜んどけよ
  └─────────


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




   ┌──────────
   │ 犯罪者に
   │ 忘身刑がくだる決め手
   └────\─────
                              ┌──────────
                   __       │ もう一つ大きいのは
                  ヽ看守/    │ 再犯を繰り返す
                   (`Д´ )ノ   │ 奴かどうかだ
                    (^v^ )     └──────────


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

┌─────────────
│そういう人間で
│一番多いのは詐欺師だ              もしもし?オレオレ
│一度楽な儲け方を知ると              C ∧_∧
│なかなか足を洗えないらしい      ___    ○(・∀・ )
└─────────────   /◎\……C(    )
                             オレオレオレ
                               オレオーレ
                      
                      

           __  フハハハ     ┌──────────
          _|__|_         │2番目が空き巣、スリ。
          ( ・∀・)')          │これも同じ理由
          [∪ ̄] ノ          └──────────
     我が名は怪盗
      オレオレーオレオーレオレ


┌────────────
│こいつらは忘身刑で
│その甘い汁の記憶を消す
└────────────

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 
                 ││       
   ┌──────────
   │ あと変な所で言うと
   │  ヤクザかな   
   └─────/────
                 ││
      __          .││     エエ
ヤクザ  .ヽ看守/         ││  ∧ ∧ ワカリマス
..コワイカラ (`д´;)         ││ (Д^ ,,)
 キライ   V v^ )ヽ       ││  UU[ ヽ
       ││         .││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
            ┌─\───────────
            │ あいつら懲役にすると
            │ 「お役目ごくろう」とか言って
            │ 結局組にもどっちまう
            │ 忘身刑で「間引き」するのさ
            └─────────────


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
     
                 ││      
  ┌─────────────
  │ 例外もあるぞ
  │ 意外かもしれんが
  │ ヤク中は忘身刑にならない
  └────────/────
                 ││
.      __          ││
     .ヽ  看/       ││  ∧ ∧
     (  `Д)ノ       ││ (д^ ,,)
      ( く^v)        ││  UU[ ヽ
       / │         ││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ┌────\───────────
    │ 連中脳が委縮しちまってるからさ、
    │ 忘刑台になんか乗せたら
    │ 下手すると死んじまう
    └────────────────

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
 
                      ││ 
  ┌───────    ││    
  │ そんなとこだ     ││  ┌──────┐
  └\──────    ││  │ じゃあな .┌─────
                      ││  └─────┤ 毛利さん
                      ││              └──/──
                      ││
.      __         ││
     ヽ看守 /        ││  ∧ ∧
.     (`Д´ )ノシ      ││ (д^ ,,)
     <(^v^)         ││  UU[ ヽ
      / │        .││  (_(_i]_)      {l{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

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 │ 重罪人がいて  |    ヽ|        \
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             i                 ,'_
             |             ヽヽ / \ヽ
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                \ -‐‐‐ヽ       / \ ̄ ̄/\
                    '''-二二__,,,,, /     ゝ / ⊂ノヽ
                     /_\/   /   \ (__ノヽ
                     / / /  /  i    \  /i
 ┌────────────┐     
 │ その犯罪の記憶を       .│
 │ 消すというのは───    │
 └──┐                  └─────
       │十分な罰になるとおもいますか?
       └───────────────
    


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      ┌─────
      │ 思うよ
      └───\─
                            ┌────────
                            │ 俺 忘身刑
                            │ うけたくないもん
                   ___      .└──/─────
                   ヽ   /
                   (    )ノ
                  <(   )
                      / │
           ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                  「ううん」



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               「ボクは、そうは思わない」







 
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毛利さんは真人間だから、忘身刑を罰と感じるのだ。
生きる道において必ず越えなければならないもの…
痛苦、抑圧、憎悪、後悔
彼らはそういった障害を一つ一つ乗り越えて生きてきたんだ。
そのことは彼らの誇りとなって、人生を明るく照らし始める。
彼らにとって、これまでの障害は自身の糧なのだ。
だから、記憶が消えるのを良しと考えられない。


ボクにとって忘身刑は救いだ。
ボクは乗り越えられなかった。その障害があまりも大きすぎて。
枷となり重りとなり、ボクの足を引き続けていたその記憶たちを
まっさらに洗い流してくれ、新しい人生を用意してくれる。
この刑は救いだ。



・・・ねぇ、刑事さん


あ い つ に と っ て も そ う だ っ た の で し ょ う か 。



平片。

ボク達家族を殺した男の名前。

平片。

奴のことを考えない日はない。
この手で殺してやろうという気持ちはもう随分と落ち着いたが、
怨恨の念は未だにボクの心の奥底に静かにくすぶり続けている。

平片。

ねえ、今なにしている。
用意してもらった人生の中で、幸せ?笑ってる?


平片。

忘身刑が救いならば、お前の贖罪はどこへ?

平片。

平片。

平片。

ねぇ、死んでよ。

死ね。

死ね。

死ね死ね死ね。

後悔して死ね
泣いて死ね
焼け焦げて死ね
自分で死ね


この世に呪いというものがあればいいのに。
ボクのこの憎悪の塊が呪詛となって、あいつを取り殺してしまえばいいのに。


そんなことを鬱々と考え日々を過ごしていた5月の昼下がりだった。
その人がボクの前に現れたのは。















つづく


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