(;^Д^)「…モモちゃん、謝りますから許してください。足がつりそうです。」

とある11月の昼下がり、せっかくの解錠時間にボクらは地面に正座させられていた。

(#^∀^)「駄ぁ目ぇよ!
      全く、あんた達ときたら、話を聞いて欲しい女心っていうのがわかってないんだから。」
( ゚∀゚)「わかる必要ねぇもんな。」
(,,^Д^)「ここ男しかいませんし。」
(#^∀^)「キイィィーーー!ああ言えばこう言う!」

モモちゃんは、運動場に備え付けられてあるタイヤにドッカと腰をおろしている。
どう見ても女には見えない。

( ^∀^)「でね、昨日私に面会者が来んだけど…」
(;^Д^)( ゚∀゚)「語 り 始 め た 」

もうボクらは逃げられない。


















(;^Д^)「…うーん、でもボク、いまいちピンと来ないんです。
      お母さん、何か変なこと言いました?」
(#^∀^)「あいつはね、男にたかって生きてきた生き物なのよ!分かるでしょ!?
      ババアになって、見向きもされなくなって、たかる相手がいなくなったから
      私をあてにしたかったのよ!」

モモちゃんは相当怒っているのだろう。
貧乏ゆすりの足がどんどん地面にめり込んでゆく。

(,,^Д^)「…でも、たった一人の肉親なんでしょ?
     モモちゃんしか頼れる人がいないんじゃないですか?」
(#^∀^)「だーかーらぁ!まず子供に頼ろうとしてるのがおかしいって言ってんの!
      親孝行!?バカ言うわ!
      ネグレクトだったのよ!?3ヶ月帰ってこない時もあった!
      あたしはね、あいつに育ててもらったなんて1ミリも思えないの!返す恩なんてないわけ!」
(,,^Д^)「…ごめんなさい、モモちゃん。
     やっぱりボクには分からないです。」
(#^∀^)「はあ!?」
(,,^Д^)「だって、どんな人間でも、親は親でしょう?」
     「無条件で大事にすべき相手だと思うんですよ。」
     「ボクだってなんどかははおやにけられたことありましたけど
      きらいになったりしませんでしたよ。」
     「そうですよ、なぐられようとけられようとほうちされようとおやはおやなんです
      おん なんてうんでくれたというそれだけでじゅうぶんでしょう?
      まもってあげなければだいじにだいじに…」
( ;^∀^)「…87君、大丈夫?」
(,,^Д^)「ハイ?」
( ;^∀^)「あなた、ちょっとおかしいわよ?」
(,,^Д^)「えっ」
( ^∀^)「さんちゃぁ〜ん!聞いてたでしょぉ?どう思うぅ〜〜〜!?」

モモちゃんはあからさまにボクを見限った。
おそらく「ダメだこいつ、話通じねぇ」と思われたのだ。

( ゚∀゚)「え?お話終わった?」

さっきから少しも会話に参加していなかった3番さんだが、聞いてすら居なかったらしい。
勝手に正座を解き、暇をつぶしていたのだろう、
彼の周りの草がきれいに全部むしられている。

(#^∀^)「んもうどいつもこいつも!」
( ゚∀゚)「…モモよぉ」

3番さんはモモちゃんに背を向けて座り直した。
手を付けてなかった部分の草をブチブチ抜き始める。

(メ   )「おめぇに後どんくれぇの時間が残ってるよ。
     貴重な残り時間をよ、どーでもいい親への怒りなんかに
     使っちまっていいのか?」
(#^∀^)「よかないわよ!
      どーでもいい親が、あたしの貴重な時間を荒らしに来たから
      ムカついてんじゃない!」
(メ   )「ほっとけよモモ。
     おめぇはさっきうんたらかんたら言ってたがな、
     そんだけ腹立てられるってのぁ、まだ思い入れがある証拠だ。
     どうでもいいなんて、本気で思ってんのか?」
( ^∀^)「…」
(メ   )「神でも仏でも、親でもカタキでも女でもねぇ、
     一人の人間として見てみろ。」
(メ   )「そいつにはよ、自分との思い出を持ってる人間がおめぇしか居なくなっちまったのよ。
     そんなおめぇも、もうすぐ全て忘れちまう。
     …仕方ねぇんだよモモ。
     弱音が出て、当たり前なんだ。
     人間ってのは"自分が消えてしまうこと"と"自分が他人の心から消えちまうこと"を
     特別怖がるように出来ちまってるんだから。
     なんでかわかるか?」
( ^∀^)「…」
(メ   )「それが"死"だからだ。」

解錠時間終了のチャイムが鳴る。
モモちゃんは居房への道すがら、一言も発することはなかった。




























































4日程経っただろうか。
気付けばモモちゃんは、隣の居房から消えていた。
ひやりとした。
忘身の日というのはこんなにも静かに、人知れず訪れるものなのかと。
3番さんは全く意に介さずという素振りで
ただ一言
「オカマってのぁ、刑を受けてもオカマなのかねぇ。」
とだけ言った。





つづく


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