2067年8月当時
とにかく困窮していた。
ボクには両親も兄弟もいない。
施設を出てからこっち2年間、6回職に就いたが
どれも長続きしなかった。
自分では真面目に立派に仕事をこなしているつもりだったが
しばらくしたら肩を叩かれる。
何が悪かったのかはよくわからないが
おそらくボクの心の奥底にある、赤黒くドロドロした気持ち悪いものの臭いを
周りが感じ取ってしまったんじゃないかと思っている。
臭いものはあっちにやりたいのが、世の常だ。
(,,^Д^)「…お腹すいた」
だからって、なんで、あんなことをしてしまったのだろう。
実のところ、その時のことはほとんど覚えていないのだ。
.
( ゚∀゚)「あひゃひゃ!あーーーひゃひゃひゃひゃひゃ!!
コン…っ!コンビニ強盗で忘身刑!!あひゃひゃひゃひゃ!」
そして今。ボクは四方を厚い壁に囲まれ、おっさんに笑われている。
耐えろ…!!耐えるんだ…っ!
見てみろあのぶっとい腕!頬の傷!三白眼!
襟の下にはちらりとウロコの模様が見て取れる。
カタギな訳がないっ!
ほほ染められる?掘られる?馬鹿じゃないのかボクは!
( ゚∀゚)「あーーーひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
このおっさんの機嫌を損ねて見ろ!首ひねられておしまいだ!
( ゚∀゚)「あひゃっあひゃっ…ひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
どれだけ笑えば気が済むんだこの人は。
( ゚∀゚)「…で?何万盗ったの」
(,,^Д^)「…未遂です」
( ゚∀゚)「ひゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
おっさんはみすぼらしく擦り切れた畳の上を腹を抑えてごろごろと転がる。
(;^Д^)「…」
( ゚∀゚)「あひゃひゃっ おまえはあれだな!俺の腹筋を休ませることを知らんな!
俺の腹筋に恨みでもあんのか!」
( ゚∀゚)「…で?何犯?」
(,,^Д^)「…は」
( ゚∀゚)「前科何犯って聞いてんのよ。何回目の馬鹿だ?」
(,,^Д^)「初…初犯ですけど…」
( ゚∀゚)「あっひゃっひゃっ…」
(;^Д^)「ほんっ…ほんとっ…」
( ゚∀゚)「コンビニ強盗未遂一回こっきりで忘身刑なんざ
なるわきゃねぇだろがぁぁ!おっさん馬鹿にするのも大概にしろぉぉ!!」
しかし本当なのだから仕方がない。
ボクはこれまで何も何も、
それこそ赤信号渡っちゃったりとか、動物園でフラッシュたいたりとか
そういうのすらせずに過ごしてきたのだ。
(,,^Д^)「…そうか、なんか変だなと、薄々思っていたんですが…
やっぱりボクが忘身刑というのはおかしいんですね。」
( ゚∀゚)「おかしいのはおめえの頭かもな。危機感てやつがねぇのか?忘身刑だぞ?」
(,,^Д^)「……」
押し黙るボクのことを腑抜けだと思ったのだろうか、
ヤクザのおっさんはボクの頭から手を離す。
(;^Д^)「あの…」
( ゚∀゚)「なんだ?俺の罪かぁ?」
(;^Д^)「いえ…っ」
( ゚∀゚)「まぁまぁまぁまぁ聞いとけや」
(;^Д^)「いらないです!ええ!お気持ちだけで!」
(;^Д^)「…」
( ゚∀゚)「"SYOBO"って電機メーカー、お前も知ってるだろぉ?」
(;^Д^)「…………」
( ゚∀゚)「あそこの社長をかっさらってよ、1日半だっけ、車で連れ回して…」
(;^Д^)「……………………」
( ゚∀゚)「最後はハジキでドタマをパーーーン!」
(((;^Д^)))ガクガクガクガクブルブル
( ゚∀゚)「あーーーひゃひゃひゃひゃひゃ!!」
…この人との相部屋生活は、始まったばかりだ。
つづく
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